菅野レコーディングバイブル


70年代にオーディオ愛好家やJAZZ愛好家に人気のあったレーベルにTBM(Three Blind Mice)とオーディオ・ラボ(Audio Labo)がある。前者はJAZZプロデューサーの藤井武さんが主宰し、後者は録音エンジニアでオーディオ評論家としても著名な菅野沖彦さんが主宰していた。その菅野沖彦さんの生涯の全録音記録を網羅したディスコグラフィーステレオサウンド社から発売されている。
演奏家ディスコグラフィーは数多くあるが、録音技師のディスコグラフィーは極めて珍しい。有名なルディーバンゲルター位ならあるかもしれないが確認していない。
当時のTBMの録音技師は神成芳彦さんで割とオンマイクでクリアな録音だった。オーディオラボのレコードは菅野さんの実弟でJAZZピアニストの菅野邦彦さんの作品や、八城一夫さんのサイドバイサイド(片面がスタインウェイ、もう片面がベーゼンドルファーのピアノを使っていることが名の由来)シリーズを持っていたが、菅野沖彦さんの録音は比較するとオフ気味で音場感豊かだったと思う。また、当時キースジャレットがソロコンサートで大人気だったが、日本公演の10枚組録音「サンベアコンサート」は菅野さんの手によるものだった。
本書にはBest Sound SelectionとしてSACD/CDのハイブリッド盤が付いている。菅野さんはトリオレコード時代からクラシックや現代音楽の録音も手がけていたので、JAZZ以外の曲も多く含まれている。どの曲も時代を感じさせないどころか、現在の録音が裸足で逃げ出しそうになるくらいの素晴しいものだ。中でも武満徹作品のエクリプスには驚いた。尺八と琵琶による曲であるが超絶した録音である。
是非お勧めしたい。

菅野レコーディングバイブル
嶋 護 編著 ステレオサウンド
2007年10月 発行 ページ 155P サイズ 四六判  4,800円(4,571円+税)
ISBN 978-4-88073-171-1 (4-88073-171-4) C-CODE 0073 NDC 760.9