タカネルリクワガタ (2)

タカネルリクワガタ(Platycerus sue Imura)の新種記載については昨年ふれたが、3月24日、突然環境省により種の保存法に基づく緊急指定種に指定された。指定されると捕獲や譲渡は禁止され、違反すれば罰則がある。すでにあちらこちらで報じられているが、どこかの愚か者がビッダースオークションに出品して11万円を超える高値で取引されたことが発端のようだ。
元々"生息地未公表"という前代未聞の新種記載論文だったがこのことが希少性を煽り、上記の馬鹿げた高値の原因の一つになってあろことは容易に推測される。
それはさておき、環境省からも拙ブログへのアクセスがあるので書いておくが、今回の指定が実効性があるものとは到底思えない。記載論文によると、タカネルリクワガタを近縁の種と区別する根拠は生殖器の形である。しかしこれは顕微鏡下レベルでの差異であって、かつ体内に納められている生殖器を確認して区分採集することは不可能である。よって生息地が種を区分認識するための唯一の実質的情報になる。生息地未公表の状況下でいくら緊急指定種にしたところで「それが何?」だ。
本種は記載されてすぐに"高値ルリクワガタ"と揶揄される可哀想な種になってしまった。生息地の予測はつくが、不心得な採集者が殺到するような場所でもないだろう。限られた個体群のようなので緊急指定種にすることに異議はない。早急に生息地を公表して、保護が実効性のあるものにして欲しい。また、今後記載の手続きは手順を守ることを切に願う。

画像:http://www.env.go.jp/houdou/hgazou/9494/736.jpg