Inside of DC-300A II

お約束の内部拝見。「公認電気技師以外は絶対開けちゃ駄目よ」と英語で書いてありますので自己責任です。
このアンプは工業製品として最高のデザインだと思う。筺体が基本的にヒートシンクとアルミ引き抜き材のフロントパネルで出来ていて、ヒートシンクは側板を兼ね、左右のヒートシンクは1KVの巨大EIコアトランス自体を利用して結合されている。それらを上下の厚みのあるメッシュプレートでサンドイッチした構造。非常に合理的だ。いわば全体がヒートシンクなので出力トランジスタの放熱効果は大きく、電源のコンデンサーを筺体外に出しているため電解コンデンサの温度上昇が少なく劣化が抑えられている。PS-200やPS-400などの後期モデルはそれらの点で劣っている。パイオニアにExclusiveM4というアンプがあったが、ウッドのケース入りで、ぱっと見は良いが放熱の点では最悪。物事の順序を間違えている。現在完動のM4は無いに等しいと聴く。その点Crownの旧製品はいまだによく働く。
さて、電源コードを抜いてメッシュのトップパネルのネジを外す。トップパネルの手前の4つの小ネジはフロントパネルに、その他の大きなネジはヒートシンクに取り付けられている。トップパネルを外したのち、アンダーパネルの手前の4つの子ネジのみを外す。その後ブラケットのサイド上下端にあるネジを外すと簡単にフロントパネルが外れる。 いよいよ内部を拝見。
まずはメイン基板
基板の中央付近とやや右下にある2Wの抵抗が熱のためやや変色している。この抵抗は60VからOP-AMP用の電圧10V(なんとツェナーダイオードだけで電圧を設定)まで落とすために入れてある抵抗。かなりの負荷に耐えている様子だ。RS-2B(3W)あたりに替えてあげたい。

メイン基板の左右にある出力基板
出力Trのエミッタ抵抗にセメント抵抗が使われている。金田式ファンとしては福島双葉のMPC78(5W)を使って欲しいところだ。
出力基板の右中央に2本パラの抵抗が見えるがこれがSP端子へ行っている。5.6Ω/1Wをパラにして2.7Ω/2Wとしている。仕様書にも"may be used"と書いてあった(笑)

こちらが出力トランジスター群。ヒートシンクに差し込み式の保護メッシュプレートを外すと全貌があらわれる。
信頼性が高く音が良いTO-3型トランジスターがこれだけ並ぶと壮観だ。クラウンのマークがあるTrはモトローラ製でおそらくMJ15003。今設計するならMJ15024かMJ21194になるだろう。いずれにしてもモトローラ(現オンセミ)のパワートランジスタは音が良い。プレミア付きの2SD218の1個の値段で20個買えるかも。トランジスタの製造が1995年の32週であることから、このアンプはDC-300A2の最後に製造されたグループだと思われる。

フロントパネル裏のInput volumeとIOCインジケーター基板。基板はパネル裏の溝にネジを入れるという巧妙なアイデアによりパネル前面には穴が開いていない。次の電源スイッチも同様。素晴らしい。