LH0032 DAC (5)

LH0032 I/V-DSC が素晴らしい音をだす理由をつらつらと考えた。あくまでもプロではなくフロくらいなので根拠レスの部分もある。深く追求しないように(笑)、はじめの3点が特に重要。


LH0032


現在のOPAMPとは全く違う構造。その内部はセラミックベースの上にFET,TR,Diode,抵抗の個別素子が載せられ金線で配線されている。いわばLH0032は究極のコンパクトディスクリートアンプである。普通のディスクリートアンプと比較すると配線距離は無いも同然、またセラミックベース上に各素子があることで自動的に熱結合されているためディスクリートアンプと比べて熱的安定性は高い。
[:W400]
基本性能もslew rate; 500 V/ms、bandwidth; 70 MHz と、現在の大抵のOPAMPを超える性能。現代では機器のコンパクト化のために省電力化=発熱をいかに抑えるかはOPAMPに限らず最重要であるけれど、LH0032はそういう条件に縛られていない時代の産物であるから20mAもの電流を消費とする。電流を流した方が音的に良いのはだれもが経験している。引換に発熱も大したものだが。またメタルキャンはプラスティックモールドに比べ、素子は樹脂に密着されることもなくフリーで、発熱ストレスも少なく、メタルに囲まれているため外界ノイズの影響も少ないと思われる。

回路的にはK式GOAそのもので、勿論K式GOAに先んじている。K式は、抵抗負荷2段差動→GOA→「完全対称」と変遷してきたが、GOA時代が一番音が良かったという人も多い。


ローカルレギュレータ


元々じんそんさんのHPA基板を出発点としているので、このI/V-DSC基板は各アンプ(3個のLH0032)毎に専用レギュレータを設けている贅沢な設計である。このため各アンプが電源を介して影響しあうことが無い。ローカルレギュレータはLH0032と並んで音質に大きく貢献していると思う。レギュレータには音質の点から無帰還型を採用している。誤差アンプを使用したアクティブ型レギュレータは出力電流値に影響されず一定電圧を保つ点では効果があるが、過渡応答に問題がある。


PCB


大きく音に貢献しているのが、Prostさんの巧みなアートワークによる基板である。
[:W400]
小さなサイズにアンプ3台と専用レギュレータ3組、そして基準電圧発生部が納められている。LH0032の高性能は穴あき基板に手配線では充分に発揮できないことがLH0032ライン(プリ)アンプの製作過程で確認された。ベタアースが必要だ。

以上が骨格をなす重要な部分、以下はパーツの選定で影響されていると思われる部分。


カップリングコンデンサ


LH0032の直近に設置し、周波数特性の良いものが使いたかったため、Panasonicの面実装PPSを標準として専用ランドを用意した。


フィルターコンデンサ


ローパス用にはPanasonicのPPSコンデンサを使用。Soulnote dc1.0に多数使われていることでこのコンデンサの存在を知った。残念ながら昨年末あたりで製造中止となった。Panasonicは面実装型以外からは撤退したようである。


使用半導体


レギュレータTRなど半導体にはすべてメタルキャン型を使用した。もちろんモールド型も使用可能である。メタルキャン型とした理由はひとつはLH0032と揃うという見栄えの点。もうひとつは音質の点である。
大きいTRには2SC959/2SA606、小さいTRには2SC943/2SA603を使用している。どちらもK式でおなじみの音の良いTrである。レギュレータ用の2SC959は既に絶滅しているので他の同等品に置き換えてもよいだろう。


抵抗


LH0032ラインアンプやHPAに使用したときの実績からタクマンのREYを全面的に採用。PRPやDALEの金属皮膜より良い。しかも安価。


おまけ


PROSTさんのHPに詳しいが、この基板の基準電圧発生部は標準ツェナーであるが、龍一さん提唱のTL431を使用したドーターボードも付いていて、それに置き換えることも可能であった。新しい基板ではそれに加えて前回はサイズ的に見送ったLED電源も使えるようになる模様。