サザンオールスターズ

サザンオールスターズの30周年を区切りとした活動休止前の最後のコンサートに関して、9月1日付日経夕刊に渋谷陽一が書いた評の一節に次のようなものがあった。

  • 「(前略)ポップミュージックは常に聞き手が主役の音楽である。評論家が誉めようが、誰かが賞を与えようが、聞き手が支持しない限りスターは生まれないしヒットも生まれない。しかし一度ヒットが生まれスターになると、多くの表現者は何かを誤解し、自らのエゴとナルシシズムを行使しようとする。そして聞き手に見放されていく。しかしサザンは常に聞き手が主役であることを忘れなかった。だから常に輝き続けヒットを生んでいった。(後略)」

名文である。シンプルに本質を突いている。渋谷陽一は僕よりちょっと年上で、ロックを中心に解説する渋谷は僕等が若いころはCulture Leaderの一人だった。そしてサザンはほぼ同年代で、サザンとともにおじさんになっていったといっても良い(笑)この組み合わせには最初からグッと来るものがあるが、それを抜きにしても素晴らしい文章だ。
上の渋谷の文中に「表現者」というフレーズがあるが、これは明らかに皮肉だ。音楽の世界だけでなく演劇の世界(演出も含む)美術の世界など、いわゆるアートの世界でちょっと有名になると彼等はよく自らを「表現者」と呼称する。そして聞き手、観客からの距離が遠くなっていくことを経験する。無名で世に認められていない者までもが「表現者」と呼称して自らを認めない世間を恨む場合もあるがこれには失笑する。で、言われてみればサザンはその対極にあった。渋谷も書いているがサザンの最後に出す曲が"I Am Your Singer"であることも象徴的だ。
ちなみにサザンオールスターズの数多くの楽曲の中で、僕が一番好きなのは「海」である。